アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「それから私はずっとその姫を探していた。
すぐに見つかると思っていた。
そこは朝廷の土地で貴族の荘園ではなかったからね。
でも結局見つからなかった」

「そうでしたか」


――え?

そういえば、家の者が迎えに来たあの時『こんな遠くまで』と驚かれたことを思い出した。
荘園からは随分離れていると、両親にとても叱られたことを。

――あれは、うちの荘園ではなかった?

「結局、あの姫のことはあきらめ、ここ左大臣家の姫を迎えることになったが、それはそれで良かったのかもしれないと思っている。
あの野の花のような純真な姫を、醜い権力闘争に巻き込んでは可哀そうだ」


呆然とするうち、声は聞こえなくなっていた。


『可哀そうだ……』

混乱の中その声だけが、いつまでも朱鳥の頭の中をぐるぐると渦を巻く。


そして、絶望させた。
< 36 / 330 >

この作品をシェア

pagetop