アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
ふたりの子供は母が離さない。

蒼絃と朱鳥、
お供は数人の下男と雑任女の他は海未だけの、気楽な旅だった。

「姫さま、さあどうぞ、庖丁が珍しいお菓子を作ってくれましたよ」

「ありがとう」

女房の海未は、兄を除けばこの家で唯一朱鳥の悲しみの理由を知っている。

少しでも元気づけようと、甲斐がいしく朱鳥を気遣っていた。

「蒼絃さまが、しばらく山に行ってくるとお出かけになられました」

「いいなぁ、兄君は自由で。私も男に生まれればよかった」

正直な今の気持ちが朱鳥の口をついて出る。

海未は何かを言おうとしたが、上手く言葉にできず困ったように眉を落とした。

蒼絃さまだって悩みがない訳じゃないと思いますよ、と言おうとしたのだ。

でも、海未からみても蒼絃の悩みなど想像できない。
生老病死さえ、もしかすると楽しむかもしれないとさえ思えた。
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