アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
ふと思い立って、朱鳥は笛の音を真似て歌いながら舞始めた。

シャラシャラと衣擦れの音にも耳を澄ませながら舞っていると、カタッと音がして振り返った。

――え?!

そこにはいるはずのない公達がいる。

「失礼した」

ぎゃーと叫び声をあげようとすると、ガシッと公達に掴まれて口を塞がれる。

もがく朱鳥に早口で公達が言った。

「あ、怪しいものではない。
 私は頭中将、別荘に人がいると聞いたので、てっきり蒼絃だと思い入ってきた。
 手を離すから、叫ばないで」

口を塞がれたまま朱鳥が忙しく上下に首を振ると、ようやく頭中将は手を離した。

胸元を隠して真っ赤になる朱鳥から、頭中将は慌てて顔を背ける。
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