アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「あまりに美しいので、つい……」

「み、見たのですかっ?!」

「あ、い、いやその。――ちらっとだけ」

やっぱり見たのねっ!と悲鳴をあげそうになったところを必死に堪えた。騒げば頭中将はまた振り返るに違いない。

この状況にクラクラしながら、朱鳥はその場にしゃがみこんだ。とにかく透けて丸見えの上半身を隠さなければならない。

――と、とにかく、そこをどいて!
じゃないと屏風の陰にも几帳の陰にも入れないじゃない!
と心が叫ぶが。

「蒼絃は?」
頭中将は一向に立ち去る様子を見せない。

仕方なく朱鳥はその姿勢のまま答えた。

「兄は山に行きましたので、ここにはおりません」

「そうですか……。
 あの、あなたは先日の舞姫?」
< 45 / 330 >

この作品をシェア

pagetop