アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
西園寺洸は西園寺ホールディングスの創業者一族で現在常務取締役。鈴木は彼の秘書。そしてその西園寺ホールディングスは、国内外の都市開発を手掛ける大手デベロッパーである。

建築物は事前に本物を見せることはできない。
そんなこともあって、コンピュータが見せてくれるバーチャルリアリティの世界とは縁が深い。

今日もその打ち合わせを兼ねて、源のオフィスを訪れている。

仕事の話が終わり、新しいゲームを作っているから見てみるかと誘われて覗いたのが、今体験した平安絵巻の乙女ゲームだった。

「彼は神秘的ですからね。陰陽師の力があっても驚かないな」

しみじみとそんなことを言う鈴木を軽く睨み、西園寺洸は、「あの手品みたいな力か?」と訝しげに眉をひそめた。

つい先程パーチャルリアリティの世界で見た陰陽師は、人の形をした紙を生き物のように操っていた。

怪しげな蝶に化けたのは、妖怪なのかなんなのか、いずれにしても現実の世界とはかけ離れている。


「もしかすると、平安時代なら実際起きたのかもしれませんよ」

鈴木がふいにそんなことを言った。

「なにが? 怪しげな蝶が金の鱗粉を輝かせるとか?」
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