アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
碧斗が庇うように連れていた、彼の妹、藤原飛香。

肩の後ろへと流れる真直ぐな黒髪が印象に残る。歳は20代前半だろうか。

鈴木がなんとはなしに『妹さんは青扇ではなかったのですか』と聞くと、それに答えたのは兄の碧斗だった。

『青扇だよ、高校までは。歴史が好きなので大学は違うが』

『歴史というと、お好きなのは平安時代ですか?』

平安時代ですかと限定したことに大きな意味はない。
ついさっき見たパーティでの余興からそんなことを言っただけだったが、彼女は一瞬目を見開くと極々小さな声で『ええ……』と俯いた。

それからもほとんど声を出すことなく、ともすると後ろに隠れようとする妹を庇うように、碧斗は『この子は色々と慣れなくて……』と言葉を濁した。

「碧斗が妹のことを『特別』だって言ってたけど、あれはどういう意味だろう?」
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