アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
西園寺洸と鈴木が飛香の噂話をしていたちょうどその頃、藤原碧斗は珍しく悩んでいた。

彼らが言っていたとおり、碧斗は感情の起伏が少ない。
突然目の前にUFOが飛んで来ても幽霊が現れても、恐らく彼は眉ひとつ動かすことはないだろう。

冷静というよりはむしろ冷淡すぎるくらいの彼が、今は苦悶の表情を浮かべて考え込んでいた。


――さて、どうしたものか


心配の原因は、碧斗の妹、飛香のことだった。

今、彼の両親はひと月という予定で先週からフランスにいる。その父が昨夜から熱を出して寝込んでしまったという。

滞在先はパリの郊外にある華道藤凪流の研修所。
碧斗に来てほしいと母から電話があった。
父が出席するはずのイベントがいくつかあるためだ。
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