アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
乗り物にしても車に酔わなくなったのはつい最近のこと。
そもそも平安の都にいた朱鳥には速度のある乗り物の経験がない。女性である彼女が乗ったことがあるのは牛車だけで、駆け足で走ったことさえ子供の時だけだった。
いきなり十時間以上の飛行機の旅を経験させるわけにはいかない。
『飛香は西園寺さんにお願いしようと思うのよ』
母はそう言った。
西園寺夫人は穏やかで心くばりができる優しい女性であり、独身時代から習い事のひとつとして藤凪流に通っている。同じように家元の直弟子だった碧斗の母とは当時からの長い付き合いで親友でもあった。
親友だからといって、飛香は平安の都にいた朱鳥と入れ替わったとはさすがに言えないが。西園寺夫人には、飛香はちょっとした事故で記憶が曖昧になってしまったと告げている。ある意味それは本当の事だ。
夫人の息子である西園寺洸とは友人である碧斗も、西園寺邸には何度か泊まったことがある。
都内の一等地でありながら庭も広く、ゲストルームもいくつもあり使用人もいて随所に行き届いた西園寺邸。
飛香も静かにゆっくりできるに違いなく、最近ほとんど交流のない京都の親戚たちのところに頼むよりも、よほど安心できると思われた。
そもそも平安の都にいた朱鳥には速度のある乗り物の経験がない。女性である彼女が乗ったことがあるのは牛車だけで、駆け足で走ったことさえ子供の時だけだった。
いきなり十時間以上の飛行機の旅を経験させるわけにはいかない。
『飛香は西園寺さんにお願いしようと思うのよ』
母はそう言った。
西園寺夫人は穏やかで心くばりができる優しい女性であり、独身時代から習い事のひとつとして藤凪流に通っている。同じように家元の直弟子だった碧斗の母とは当時からの長い付き合いで親友でもあった。
親友だからといって、飛香は平安の都にいた朱鳥と入れ替わったとはさすがに言えないが。西園寺夫人には、飛香はちょっとした事故で記憶が曖昧になってしまったと告げている。ある意味それは本当の事だ。
夫人の息子である西園寺洸とは友人である碧斗も、西園寺邸には何度か泊まったことがある。
都内の一等地でありながら庭も広く、ゲストルームもいくつもあり使用人もいて随所に行き届いた西園寺邸。
飛香も静かにゆっくりできるに違いなく、最近ほとんど交流のない京都の親戚たちのところに頼むよりも、よほど安心できると思われた。