アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
それなら私がと席を立った飛香は、ほどなくして冷えた麦茶を持ってきた。
「ありがとう。飛香は麦茶が好きだね」
「これはあまり変わらないから」
そう言ってにっこりと頷く飛香は、何と比べて変わらないのか、それ以上は言わない。
口に出さなくても兄には伝わるし、今はなるべく平安の都での生活を振り返るような発言はしないようにしているのだ。
他人の前でうっかり口を滑らせたりしないために。
何を隠そう一見何も変わりないこの妹は、外見は飛香であるが、その中にいるのは平安の都にいるはずの“朱鳥”なのである。
「美味しい……」
こうばしい香りと共に冷えた麦茶が喉を伝っていくのを感じながら目を閉じると、慣れ親しんでいる味が、遠い時間の溝を忘れさせてくれる。
どんなに時が流れても変わらないものは変わらない。
そんな安心感に心が満たされたところで、飛香はちらりと向かいのソファーを見た。
そこに座っているのは、平安の都の兄蒼絃と瓜二つの、妹思いで優しい兄、碧斗。
彼はさらりとした長い髪を、平安の蒼絃のように後ろでひとつにまとめている。
同じ切れ長の瞳。その薄い色の瞳が、時折金色に輝いて見える神秘的なとこまでそっくりだ。
「ありがとう。飛香は麦茶が好きだね」
「これはあまり変わらないから」
そう言ってにっこりと頷く飛香は、何と比べて変わらないのか、それ以上は言わない。
口に出さなくても兄には伝わるし、今はなるべく平安の都での生活を振り返るような発言はしないようにしているのだ。
他人の前でうっかり口を滑らせたりしないために。
何を隠そう一見何も変わりないこの妹は、外見は飛香であるが、その中にいるのは平安の都にいるはずの“朱鳥”なのである。
「美味しい……」
こうばしい香りと共に冷えた麦茶が喉を伝っていくのを感じながら目を閉じると、慣れ親しんでいる味が、遠い時間の溝を忘れさせてくれる。
どんなに時が流れても変わらないものは変わらない。
そんな安心感に心が満たされたところで、飛香はちらりと向かいのソファーを見た。
そこに座っているのは、平安の都の兄蒼絃と瓜二つの、妹思いで優しい兄、碧斗。
彼はさらりとした長い髪を、平安の蒼絃のように後ろでひとつにまとめている。
同じ切れ長の瞳。その薄い色の瞳が、時折金色に輝いて見える神秘的なとこまでそっくりだ。