アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
雑誌やテレビで見たとおり、目にする女性たちは顔を隠してはいない。
お日様の下、男も女も顔を隠すことなく普通に話をしながら道を歩いている様子に、飛香は感動を覚えた。

『なんて自由なの!』

わからないことだらけだが、飛香は概ねこの時代が好きであり、とても気に入っている。

「飛香、実はね」
蒼斗はフランスに行かなければいけなくなった話を切り出した。


「ということで、留守中の飛香の居場所なんだが、都内にいる母の知人の屋敷になる」
飛香は一瞬驚いたように目を見張ったが、それでも「はい」と頷いた。

「客用の部屋がいくつもあるようなとても広い家だし、ご主人は海外出張中だ。ビジネスマンのひとり息子は職場の近くのホテルで寝泊まりする事が多く、基本的にほとんど家にいない。
 昼間は夫人と使用人だけだ。
 夫人は飛香が小さい頃しか会っていないし、心配することはない」

もちろん不安がないわけではない。
それでも全面的にこの現代の兄を信頼している飛香に、疑いの気持ちは浮かばない。「わかりました」
と頷いて、にっこりと微笑んだ。
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