アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
彼らを見かけたのは、先週。兄と一緒に参加したパーティでのことだ。

飛香は兄の友人たちとの会話に戸惑い、ピアノの演奏を聴いて来るといってその場を離れてしまったが、時々振り返って見た兄と一緒にいた友人たちのなかに彼らはいた。

――遠かったので、確信は持てないけれど。

朱鳥と飛香がそっくりなように、彼らもまたそっくりな姿で今の時代に存在するのだろうか?

もしかしたら、お世話になる西園寺邸の息子とは、あのふたりのどちらか?

ざわざわと落ち着かない胸に飛香は手をあてた。

『あの野の花のような純真な姫を、醜い権力闘争に巻き込んでは可哀そうだ』
そう言った荘園の君。

『また、会いに来てもよろしいですか?』
そう言った頭中将。

飛香は唇を噛んで、西園寺洸がそのどちらでもないことを願った。
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