アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
ふいに洸が言った。

「舞姫がいただろう? あの子には見覚えがある。誰かは思い出せないが……」

「そうですか? 私には覚えがありませんが」

――鈴木が記憶にないということは、気のせいだろうか?

微かに首をかしげながら、洸はVR のなかで羽衣を翻しながら舞っていた女性を思い返した。


「そういえばイメージしていた『五節の舞』とは随分違いましたね」

鈴木が言う通り、以前目にしたことがある『五節の舞』は、ゆったりとした動きの舞だった。

だが、今日目にした舞は違う。

恐らくはほとんど動かなかったであろう平安時代の姫にしては、クラシックバレエのように軽やかな動きで、羽衣を身に着けたまさに天女の舞のようだった。


漆黒の長い髪、赤く小さな唇、抜けるように白い肌。

うら若い、まだ幼さの残る少女のような女性。


心に残るデジャヴ……。
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