アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
平安☆うたかたの恋
「姫さま、朱鳥(あすか)姫さま」
「どこにいるの? 朱鳥」
娘を呼びながら、ここ藤原家の奥方である北の方は、やれやれとため息をつく。
琴の手習いをしていたはずの娘、朱鳥姫が、いつの間にかいなくなり姿を見せない。
「これからお客さまがいらっしゃるというのにもう」
普段あまり動かない北の方は、ぜぇぜぇと息を切らす。
ほんの少し歩いただけだというのに、北の方は自分で探すことを早々にあきらめた。
「とにかく、姫を、探しておくれ」
「はい、わかりました」
わらわらと八方に散る若い女房(女性の使用人)の背中に向けて「頼みましたよ」と声を投げかけ、北の方は困り果てたように頭を抱える。
「大丈夫でございますか?」
女房の長である笹野(ささの)に支えられながら、北の方は嘆いた。
「姫は、もうすぐ二十歳になってしまうというのに、どうしたものか」