きみと1番目の恋

ープルルルル

彼が出るまでの何コールは
緊張と不安でいっぱいだった。

郁人「もしもし、翼さん?」

翼「あ。あの...
今日の今日で電話してごめんね。」

でも、いつもと変わらない
彼の声を聞いた時
確かに私は安心した。

郁人「ううん、平気。
むしろ嬉しいくらいだよ。
どうしたの?何か用?」

翼「あのさ、よかったら
今から飲みに行かないかな?」

郁人「え?今から?」

翼「あ!忙しかったらいいの。
また今度でも。全然!」

郁人「いいよ。飲みに行こう。
じゃあ、駅前で待ち合わせよう。」

電話を切り駅前へ向かうと
そこにはもう郁人くんがいた。

翼「早かったね。」

郁人「ちょうど近くにいたから。」

翼「そっか。ごめんね。」

郁人「何で謝ってんの?」

翼「電話番号知った日に
いきなり電話かけて
飲みに行こうだなんて
迷惑だったかなって。」

郁人「迷惑だったら来ないよ。
どこ行く?俺がよく行く居酒屋でいい?」

翼「うん、ありがとう。」

久しぶりにそう思った。
武彦との時間を別の誰かで
埋めようとする浅ましい自分とか
郁人くんを誘った本当の理由を
言わない嘘つきな自分は
最低な人間だって。
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