きみと1番目の恋

だからと言って、武彦との
関係をすぐに終わらせる事は出来なかった。

始める事よりも終わらせる事の方が
難しいという事は知っていた。

始める事は簡単だ。
嘘の愛の言葉を吐き、体と体が
繋がれば愛と呼ばれるのだから。

だけど、愛がなくなったと
証明するのは難しい。

実際の所、郁人くんと恋を
始めたいと思う気持ちと同じだけ
武彦との関係をギリギリまで
続けたいと思う気持ちもある。

それは、愛情というよりは
意地のようなものだった。

この4年間を無駄にしたと
思いたくない気持ちと
私の事を裏切った武彦への復讐。
そして、今でも捨て去る事の出来ない
武彦の事を愛していた頃の記憶だった。
< 158 / 387 >

この作品をシェア

pagetop