きみと1番目の恋
だからと言って、武彦との
関係をすぐに終わらせる事は出来なかった。
始める事よりも終わらせる事の方が
難しいという事は知っていた。
始める事は簡単だ。
嘘の愛の言葉を吐き、体と体が
繋がれば愛と呼ばれるのだから。
だけど、愛がなくなったと
証明するのは難しい。
実際の所、郁人くんと恋を
始めたいと思う気持ちと同じだけ
武彦との関係をギリギリまで
続けたいと思う気持ちもある。
それは、愛情というよりは
意地のようなものだった。
この4年間を無駄にしたと
思いたくない気持ちと
私の事を裏切った武彦への復讐。
そして、今でも捨て去る事の出来ない
武彦の事を愛していた頃の記憶だった。