きみと1番目の恋

翼「...不倫なの。」

だから、きっとごく自然に
言ってしまったんだ。

親友にも話せない秘密を
ほとんど初対面の若者に言ってしまった。

言ってしまった言葉は訂正出来ない。
スパンのあるメッセージではない
生身の人間への言葉は、特に。

後悔したって取り消せない。

でも、不思議と今の私は
訂正したいとも後悔してるとも
思わなかった。

郁人「へぇ、意外。
翼さんってそうゆう所
潔癖そうなのに。」

翼「...バカだよね、私。」

郁人「うん、すげぇバカ。」

それは多分、目の前にいる人が
この人だからだ。

年下のくせに失礼な人だけど
私なんかのためにケーキを
用意してくれた彼だから。

郁人「でも、俺になら
出来るんじゃない?」

翼「出来るって?」

郁人「泣いたり笑ったり
怒ったり言いたい事言ったり
俺になら出来るんじゃない?
知らない者同士なんだし
幸い、俺はBARの店員だし
俺に言えばいいじゃん。
翼さんの思ってる事、全部。」

この3年間、私は武彦から
1度でもこんな雲ひとつない空のような
言葉を貰った事があっただろうか。
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