隣は何をする人ぞ~カクテルと、恋の手ほどきを~
(強がって、無理してんな)
背伸びのしすぎだろう。それに気付かない相手の男と似合いだとはとても言えない。
もしも俺なら……不毛とも思えるやり場のない感情が、燻りはじめていた。
そして、ある暑い日の夜にその出来事はおきた。
彼女にとっては悪い事件だっただろうが、俺にとってはチャンスとなった。
いつもなら仕事中は、カップルの会話には聞き耳を立てないようにしている。意識しなくてもそれが自然と身についていた。
ただし、何事にも例外はある。その日はBGMがあっても、なぜかあるカップルの会話が聞こえてきてしまった。林檎ちゃんと、その連れの男のことだ。
「ごめん、莉々子ちゃん。僕たちは長くは続かないと思うんだ」
「どうしてですか? ……あの、私……何がダメでした?」
突然別れ話を切り出された彼女は、混乱している様子だった。
彼女を悲しませる相手の男に複雑な感情を持ちながら、それでも俺はこの瞬間、もう躊躇しないと決めた。
彼女には似合っていないカクテル……チェリー・ブロッサムの代わりに、オレンジジュースを差し出した。自分の存在を誇示するように。
きっと今まで意識すらされていなかっただろうが、今夜からはそうはいかない。
「いい子はもうやめます。明日から私、悪い女になります」
紳士的に送り届けた時、そう宣言した林檎ちゃんがあまりにかわいくて、噴き出しそうになった。
それは無理だ。なんせ、もう悪い男に捕まってるから。
背伸びのしすぎだろう。それに気付かない相手の男と似合いだとはとても言えない。
もしも俺なら……不毛とも思えるやり場のない感情が、燻りはじめていた。
そして、ある暑い日の夜にその出来事はおきた。
彼女にとっては悪い事件だっただろうが、俺にとってはチャンスとなった。
いつもなら仕事中は、カップルの会話には聞き耳を立てないようにしている。意識しなくてもそれが自然と身についていた。
ただし、何事にも例外はある。その日はBGMがあっても、なぜかあるカップルの会話が聞こえてきてしまった。林檎ちゃんと、その連れの男のことだ。
「ごめん、莉々子ちゃん。僕たちは長くは続かないと思うんだ」
「どうしてですか? ……あの、私……何がダメでした?」
突然別れ話を切り出された彼女は、混乱している様子だった。
彼女を悲しませる相手の男に複雑な感情を持ちながら、それでも俺はこの瞬間、もう躊躇しないと決めた。
彼女には似合っていないカクテル……チェリー・ブロッサムの代わりに、オレンジジュースを差し出した。自分の存在を誇示するように。
きっと今まで意識すらされていなかっただろうが、今夜からはそうはいかない。
「いい子はもうやめます。明日から私、悪い女になります」
紳士的に送り届けた時、そう宣言した林檎ちゃんがあまりにかわいくて、噴き出しそうになった。
それは無理だ。なんせ、もう悪い男に捕まってるから。