隣は何をする人ぞ~カクテルと、恋の手ほどきを~
「……新さん、すきです」

ちゃんと目を合わせて言うと、五十嵐さんが破顔した。本当に嬉しそうに。

「ああ、莉々子。かわいい」

のしかかってくる体が重い。その重さがすごく好き。ちょっと乱暴なキスも好き。夢中になってるのは私だけじゃないって、感じることができるから。
キスは乱暴なくせに、私を横たえた時の五十嵐さんの優しい手つきも大好き。

燃えあがった熱は引くことを知らない。すぐそこにベッドがあるのに、床の上でもつれ合う。
私が五十嵐さんの首に手を回して、ねだるように引き寄せたところで、ぐるぐるとどこかから、今の状況に似つかわしくない音が響いた。……どこかからではなく、私のお腹からだ。

「ック……」

五十嵐さんは、必死に笑いをこらえている。

「……どうぞ、遠慮なく笑ってください。むしろ、そうしてくれないと泣きます」
「かわいい。林檎ちゃんかわいい」

また人のことを変なニックネームでよぶ。きっと私の頬が真っ赤になっているせいだ。

「遅くなったけど、飯食いに行こうか」

さすがに、このまま甘い時間を続行するわけにもいかず、五十嵐さんは立ち上がった。私と目があうたびに、思い出し笑いをする五十嵐さんはやっぱり意地悪だ。
最初の予定だと、どこかでブランチをするつもりで、朝食を食べていなかったし、泣いて余計お腹が減ってしまったのは不可抗力だ。
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