僕ら死神の仕事
「でさ?前回やっとメンバーが増えたわけじゃん?なのにさ〜」

僕は机にある山のような書類を目にして数秒固まって笑い出す。

「なんでこんな量の書類を上は送ってくるわけ?あっははははは…」

もはや乾いた笑いしか出てこない。

朝来たあのバカ上司が置いていったやつだ。

「すー…はー…ふざけるなあの上司ー!」

「仕方ないよ…こっちは平和で回収リストが今日はないから…」

「まぁシキの言う通りだな。それに3人で割れば昼までに終わらなくは無いだろ。」

「だってさ?日本での一日の死亡数が3000ほどだと考えてさらに47で割ったらひとつの都道府県で60人はこっちに来るはずなんだよ?!なのになんでこんな書類仕事やらなきゃ行けないの?!」

とりあえずシキに実技として回収やら何やらを教えて多分もう3日。

3日しか経ってないのになんで?

何?死神の世界は新人に嫌がらせでもする世界なの?

すっごい嫌な世界じゃん!

「しかもさ?前回の話でやっと新メンバー入って少しはストーリー進んだりとかそういうの無いわけ?!」

机に手をついてガクッとうなだれる。

「流石にメタいよ。ゼロ。」

「とりあえずこの書類を片付けないと…年別に分けてファイリングしなきゃかな…」

過去のリストが…何枚だろ。

普通のコピー用紙が売られてる厚さ3つ分はあるんだけど。

「イサヨ〜コピー用紙って何枚で売られてるの?」

「200とか300じゃないですか?」

「そしたらこれ600とか700はあるよ…何でこんなのファイリングしなきゃなの〜これ絶対5ヶ月分くらいはあるよ〜」

死神のリストは書いた当日にファイリングするのが原則。

稀にこの回収する範囲じゃない死亡者が住んでいたのがここだったものも送られてくるんだけど…どう考えても量がおかしい。

きっと溜め込んでそれから送ったんだろう。

「頑張るしか…ないかな。」

シキはその上のほう…見た感じ200枚近くを手に取って資料室へ行く。

僕もいやいや書類を手に取って資料室へ行く。

資料室はいつ見ても不思議な場所だ。

真っ白で何も無い部屋。

部屋の隅などない。

どこが終わりなのか…どこまで本棚があるかすら分からない。

何億…いや、桁をつけたらどれくらいになるのだろうって量だ。

数え切れないほどのの魂のデータ。

前世を調べるのにも一苦労な量だ。

僕らの前の死神たちがこれを作ったかと思うと本当に尊敬するレベルだ。

資料室にある広い机にとりあえず置いてまず月毎に分ける。

「見た感じ確かに5ヶ月分くらいだな。今ぱっと見ると昨日から何か月前とかなりバラバラだ。」

イサヨは何枚か書類を分けながら言った。

「2ヶ月前のやつってどこだっけ。」

「それは右の方。ゼロから見たら左だな。」

左にまとめてある書類の上に置いて他も進める。

「うわー…これいつのだよ…シキ、後ででいいから2006年2月のファイル持ってきて。」

「了解…」

シキもこっちには慣れたようで今は仕事を普通にこなしている。

飲み込みが早い。

口数は少ないけど普通に良い奴だ。

何もないとはいえここまで無言で書類仕事をすることになるとは思わなかったし。

そこで僕はあることに気づいた。

「あ、ねぇねぇ。イサヨ、今日は弟くん居ないんだね。」

「基本地界の時には居ないだろ。基本はすぐ魂の楽園行くからな。」

「魂の…楽…えん?」

「あぁ、まだ教えてなかったな。何年後かに生き返る魂の一時の休み場所っていえば分かるか?」

「まぁ要するに人間の言う天国だよ。」

「天国って本当にあったんだ…」

「まぁそこの子供の魂たちとよく遊んでるんだよな。んで、遊び終わったらこっちに来るな。」

「確かにいつの間にか横にいるよね〜。イサヨとは違って偉いね〜」

「ゼロ、馬鹿にしてるなら手を動かせ。」

「え、手は動かしてるよ?」

無駄な会話ばかりしていたのに書類は半分をきった。

「…まだ半分とかあの上司今日帰すつもり無いよね…恨み殺していい?鎌でザクッ☆でもいいよ。」

「ゼロが…というか死神が言うと本気に聞こえるから怖いな。」

「死神って…呪い…使うの?」

「使うところ見た事ないな。」

「…そしたら死神がいる意味なくない?」

「恨み殺すとか言った死神が言うとこれまた不思議だな。」

書類の端を揃えながらイサヨは言った。

「とりあえず年単位でバラバラのやつは何枚かしまってくるから仕分け頼む。」

「了解。」

「頑張って〜」

すると僕もシキも何も喋らずただ黙々と作業を進める。

半分をきった書類を上からとる音だけが響く。

シキは書類を1枚1枚確認をして分けていく。

丁寧に。

最初会った時…というか回収した時か。

残酷で"復讐"のためならなんでもやるような目をしていたシキ。

確かに切れ長な目で身長は高くたしかに見た目少し威圧的?ではある。

でも内面を見るとただ口数が少ないだけで仕事なんかも全然出来るしいい人間ではあったはずだ。

何故、こんなに恨んでしまったのか。

疑問でしか無かった。

最後の資料を手に取り見ながらそんなことばかりをかんがえる。

「終わったんで…ファイルにまとめてきます。」

「え?あぁ!了解!また変な年代のやつはイサヨにでも渡しときなよ?僕は3ヶ月分くらいは適当にまとめるからさ。」

「分かりました。」

それだけの会話。

何故か引っかかる。

どうしても、シキの過去が。

結局予想よりも早く終わって仕事を終わらせて定時上がりで帰れたのだった。

資料室では時間感覚が狂うからか。
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