僕ら死神の仕事
終わった…

救急車の音とパトカーの音が混ざる。

赤い光は地面から反射してるようにも思える。

もちろん…地面からも赤を発しているようにも見えるが。

僕は鎌を縮小させてとにかく細い路地に入って座り込む。

「疲れた…」

体の倦怠感と体の疲れとは違う不快感を感じながら僕は目を伏せる。

少しの休憩…と言ってもきっとすぐ集合だろうけど。

今日だけで100人以上の人達が死したのかと思うと正直ゾッとする。

何年やっててもこの気持ちは抜けることはなかった。

僕はそんなのを振り切るかのように立ち上がってハチ公前まで向かう。

まぁ…振り切ることなんてできるわけが無いけどね。

せめて今目の前にいる腕を抱えた人がまたこっちの世界に来ないことを願うだけしか僕には出来ない。

倒れている…僕が鎌を向けた人がせめて静かな眠りの世界に沈むことを願う。

こんな仕事をしているのに…馬鹿だなぁ。



「あ、お疲れ様〜」

ハチ公前にはみんながいた。

「ゼロ、お疲れ様。シキも無事に終わったみたいだし。」

「セイヤさんもちゃんと回収してきました。」

「うぅ…ひどいよ〜…えな〜せっかくいいところだったのに〜」

「良くないです。それこそ謹慎処分受けますよ。」

「それはいやだけどさぁ〜」

駄々をこねる子供のような仕草にいまさっきまでのキャラは混じってなかった。

「いや…でもセイヤさんの回収の速さには驚きました。ゼロでさえも疲れているくらいの回収量ですし。」

「言ってなかったっけ?セイヤは昔有名な殺人事件起こした快楽殺人者だよ。」

「…は?」

「電車内での殺人事件あったでしょー確か10人?20人?近く死んだやつ。負傷者も何人かいたと思う。シキは資料とかで見てない?」

「聞いたことくらいはありますけど…セイヤさんが?」

「そうだよ〜懐かしいはなしだねぇ〜」

「中央任せて大丈夫って言ったのはこういう理由ね。いい話ではないけどセイヤは仕事に生きがい感じてるタイプだから。」

実際今のセイヤは眠気もなさそうで元気そうだ。

「まぁ…とりあえず今回はこれで無事終わりましたし…ゼロさん達も疲れてるようですし帰りましょうか。」

「エナさんの言う通りだね!僕早く帰りたい〜。イサヨ!おんぶしてよ!」

「子供じゃないんですから甘えないでください。」

ちぇーと拗ねながら僕は仕方なく歩く。

そしてセイヤとエナさんにお疲れ様を言って事務所に戻った。


「…で、解決〜とまで行ったはいいんだけどなんか上手く行きすぎな気がするんだよね〜」

明日提出の書類も確認の書類とリストのみだ。

僕は何となく手に取りぱっと目を通す。

「上手くいったならいいだろ。書類も今日は出さずに帰るぞ。」

「書類…そこまで出なかったし…」

「まぁ…終わったんだしいいんだけどー…気にしない方がいいか。明日は書類提出しなきゃダメだし早く帰ろー」

僕は書類を机の上に投げ捨て帰る用意をする。

「その方がいいだろ。」

「確かに…疲れ取らないと…」

「次の日は有給とるから。」

「おー。まぁ何も無ければ俺らも取るかな。」

「有給…どれくらい残ってるかな…?」

「ブラック企業だからあんまり期待しない方がいいよ〜。」

笑いながら言って僕は事務所を出る。

これで1つ、大きな仕事は終わった。
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