僕ら死神の仕事
今日で被害者は10人をきった。

今も犯人は逃走中。

刃物での殺害。

ネットでは愉快犯まで出てきた。

世間はこの問題に対し腹を立てている模様…




「で、その話をどこから持ってきたんだ?」

「え?このスマートフォンってやつが教えてくれた。」

「へぇ。」

「地上って楽だね。これで連絡とか出来るしニュースも見れる。」

「地界では意味ないじゃないですか。」

「…でも地上ではゲームも出来るんだよ?」

「仕事中に何しようとしてるのかな?」

「もう…口うるさいなぁ。」

僕は電柱の上に立って周りを見渡す。

真正面からくる強い風。

騒がしくスピードを上げる車。

近くを流れる川の水の音。

そんな所か。

何か変わったところなんて何も無い。

「そう言えば今日のリストの人は深夜帯だよね?」

「確かに…死因は銃殺って書いてある。」

「あと同じところで4分前に刺殺のリストがあるね。」

「…ってことは犯人が捕まった可能性もありますね。」

「犯人が抵抗したから銃殺…もしくは犯人が自死もありえるねぇ。」

「その辺はどうせまた書類で見ますし確認は今度にしましょうか。」

「そうだねぇ。」

何も無い平和な時間をただただ流していく。

電柱の上から見下ろすと商店街の景色。

行きたくなってイサヨに話す。

「せっかくだからここの商店街に売ってたお焼きってやつ食べたいんだけど。」

「え…またかよ。この前もそう言って仕事前にアフォガート?ってやつ食べてたよな?」

少し前にも地上のカフェでアフォガートというものを食べたばかりだ。

知らないなぁと思いながら食べたい食べたいと駄々をこねた。

「じゃあせめてその体を普通の同い年くらいのにしろ。前も弟くんですかとか聞かれて面倒だったんだからな。」

「ちぇー。分かったよ。男子高生にでもなればいいー?」

「そうしないと連れていかない。」

「全力でなります。」

僕は自分の首に鎌を突きつけ血を出す。

鮮やかな血が宙を舞い、僕の体を少しづつ変えていく。

自分の体が変わっていきちょうど高校生くらいの男子に変わる。

黒い髪がところどころ跳ねていて身長は平均。

目は少し赤が入った感じ。

「いてて…地味にこれ痛いんだよな〜てか…死神ってどういう原理で出来てるんだろ。」

少し低くなった声。

高くなった目線。

首を押さえながらイサヨに聞いた。

「それ調べても出てこないパターンだな。」

「インターネットに聞く?」

「出てこないと言ったばっかりなんだけどな…ほら。早く行くぞ。あ、一人称「俺」にしろよな?」

「えーめんどくさい。」

「お焼き食べないんなら俺は書類残ってるから戻るが。」

「すいませんでした。」

そんな会話をしながら商店街にあったお焼きというものを食べた。



「あー美味しかった。満足。」

「お前のせいで女子に絡まれた…」

当たり前だが買うには人間に見える姿にならなきゃならなかった。

僕はただ挨拶しただけなんだけどなー。

「イサヨが異常に顔面偏差値高いから。」

「うるせー。」

「さて…11時まで何しようか。あと…3時間近く?」

まぁ食べただけだから時間なんて余るに決まっていた。

それを考えると女子との会話は悪くない暇つぶしだった。

「てかそろそろ一人称「僕」に戻していい?あと体も戻したい。」

「帰ってからなら痛くもなく戻せるのに?」

死神にも医療機関というか負傷や今の状態を治すところはある。

でも俺…僕はそこが大嫌いだから行きたくはなかった。

「絶対行かない。」

「戻すなら今のうちだよ。」

でもこの体は意外に動きやすくて戻す気もなかった。

「このままでいい。時間つぶしいこ。」

そう言って適当な道に入った。
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