私のキャンバス
私のキャンバス
緑に囲まれた大きな屋敷の端にある部屋。
そこはアトリエになっている。
コンスターチに食品用の黒の染料を入れたデイジーはバケツの中をかき混ぜながら
<月が隠れてしまった闇夜のようだわ>
と思った。
黒色のコンスターチを両手で掬うデイジー。
とろみのある冷たい感触が心地いい。
デイジーは両手に抱えた闇夜をそのままキャンバスに塗った。
キャンバスはたっぷり染まる。
<もしかしたら…今日はなんとか満たされそう>
そう思ったデイジーは手を止めることなくキャンバスを塗って、塗って、また塗る。
キャンバスの白い部分がなくなってしまっても、塗り続けた。
それでもデイジーは満たされない。
<どうして今日もダメなの…?>
空しくなって深いため息が出てしまう。
「……はあ」
「普通のキャンバスを塗っても気が済まないでしょう、デイジー様」
聞き慣れた声に驚いたデイジーはハッと振り返った。
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