一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
すると、不意に彼がこちらを見た。思わず会釈をする。
と、その時。
ホテルの裏口から入ろうとしていた彼が、何かに気がついたように目を見開いた。
「待って、そこの人!」
呼び止められ、呼吸が止まる。
こちらに駆け寄ってくる超有名人に、体が硬直した。動揺が抑えきれないでいると、近くで立ち止まった彼は、私の従業員証を見つめて声を上げた。
「やっぱり、見たことがあると思った。…君が、桜庭 美香さん?」
?!
?!!?!
今、名前を呼ばれたような。
しかも、見たことがある、って言った?
私は毎日テレビ越しに見てるけど、彼はこんな一般人のことなんて、どう考えたって知らないはずなのに。
目を見開いて言葉が出ない私に、彼は苦笑して言った。
「ごめんね、急に声をかけて。僕のこと、知ってる?いちお、俳優をしてるんだけど…」
「も、もちろん、存じ上げております!本日、当ホテルのイベントにお越しいただいた如月様ですよね?」
「あー、かしこまらなくていいよ。今は君もスタッフじゃないでしょ?」