一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
ーーブブブ。
「「!」」
ふいに、私のポケットの中でスマホが震えた。一定間隔で聞こえる音。電話だ。
手に取ると、相手の名前が画面に映し出されている。
「久我さん?」
(!)
言い当てられ、どきり、とした。電話の相手は、久我樹。
彼から電話なんて珍しい。彼のマンションでの一件から樹さんと会うのを避けてきたが、電話に出ない選択肢はなかった。
しかし、次の瞬間。通話ボタンを押す指が低い声によって阻まれる。
「出んな。」
(え…)
ぱしっ。
掴まれる腕。
とっさのことに目を見開くと、顔を上げた先に真剣な表情の瀬戸がいた。見たこともないまっすぐな瞳。
鳴り続ける電話。しかし、それに応えることは出来ない。
プツ。
やがて、呼び出し音が消えた。手の中で画面が真っ暗になる。
私は、瀬戸から目がそらせなかった。動揺がこみ上げ、とにかく状況が飲み込めない。
「…な、なんで……」
やっと出たのは、その一言だった。瀬戸はそれに答えようとしない。
だが、私の手を離そうともしなかった。