一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

優しい顔。甘く緩んだ瞳。そのどれもが、私の心を締め付ける。

今、これ以上彼と話すわけにはいかない。

…コツ、と踏み出す足。顔を伏せて小さく告げた。


「お仕事お疲れ様です。えっと…、じゃあ、お、おやすみなさい。」


「?」


明らかに動揺した声。ぎこちない口調。唐突な別れの言葉に、きょとん、と、する彼。

不自然なのは自分でもよく分かっていた。しかし、私はそれ以上に、早くこの場から離れて一人で心を落ち着かせたい。

そんな焦りのせいだろう。いつもは躓くはずのないコンクリートに足を取られる。


カッ…!


「「!」」


体がよろめくと同時に、彼の力強い腕が素早く伸びた。

流れるように抱きとめられる体。彼の胸にぼすん、と倒れこみ、息が止まる。


「っと。…へいき?」


「!す、すみません…!」


至近距離で交わる視線。

触れるシャツ越しの温度が、数十分前の瀬戸と重なる。


(ーーっ!)


だめだ。

今は何をしても、全て同じ記憶が蘇る。


トンッ!


つい、樹さんの胸を押し返した。無意識の行動に動揺が走るが、謝る余裕もない。


「っ、もう大丈夫です…!失礼しました…!」


…と、即座に彼から離れ、ぺこりとお辞儀をしながらその場を立ち去ろうとした

その時だった。

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