一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~


「待って。」


ぱしっ!


ふいに腕を掴まれた。そして、何かを言う間もなく、やや強引に引き寄せられる。


「ひゃっ…!」


一気に距離を詰められた。ふわり、と首筋にに彼の吐息がかかり、肩を抱かれるような体勢に心臓が飛び跳ねる。


「…っ、い、樹さん…?!」


戸惑いの中、声を上げると、微かに彼の息遣いが聞こえた。そして数秒後。ぼそり、と呟かれた彼の低い声が耳に届く。


「…男といたの?」


(!)


ドン!


つい、さっきよりも強い力で押し返した。初めて真正面から目があうが、彼の表情はいつもの数倍冷え切っている。


「ど、どうしてそんなこと…」


「美香のシャツ。微かに香水の匂いがする。…メンズ用のを知らずにつけるなんてないよね?」


あんたは犬か。

いや、私が恋愛沙汰に疎いだけで普通気づくものなのかもしれない。ドラマや漫画でも、不倫が女物の香水から発覚する修羅場がいくつもあった。

…って、なんで私がその状況に陥っているんだ?!

ふっ、と、頭に瀬戸の顔が浮かんだ。

タクシーで介抱した時…、いや。彼のマンションの前で抱きしめられた時が原因に違いない。


「香水の匂いが移るようなこと、したの?」


「!わ、私は酔った瀬戸を介抱しただけで…」


「へぇ、瀬戸といたんだ。」

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