一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
すると、私の心中を察した様子の彼が、もどかしいように眉を寄せる。
「俺が電話した時、瀬戸といた?」
「…!」
「だから、出なかったんだ?」
ちがう、あれは…!
反論しようとするが、言葉が出ない。確かに、私は樹さんの電話に出れなかった。だけど、その理由を瀬戸のせいにすることはできない。
あの時、彼の腕を振り切ってでも樹さんを優先していたら電話に出れたはずだ。瀬戸に呑まれていたのは私。言い訳なんてできない。
すると、次の瞬間。樹さんはばっさりと重い一言を言い放った。
「あんたは、自覚がなさすぎ。下心のない男なんているわけないだろ。まさか、また酔っ払ってた?俺との約束なんて、どうでもよかった?」
『これからも、俺の前では好きなの飲んでいいよ。…でも、他の男の前では酔い潰れたりしないで。』
ぷつん、と、私の中で何かが切れた。
「…なんで、勝手に決めつけるんですか…?」
「…!」
「“約束なんてどうでもよかった”…?そんなわけないじゃないですか!」
私が、どれだけあの一言に従ったか。
酔わないようにセーブして、上司の絡みを愛想笑いでかわして。
わざわざ飲み会の間中、樹さんのことを考えていた自分が、急に馬鹿馬鹿しい。
「瀬戸は、悪酔いした上司に絡まれた私を庇って潰されたんです。放っておけるわけないじゃないですか…!それに、私は酔ってません!樹さんとの約束があって、お酒を飲む気になれなかったから…!」
「…っ!」
「そもそも、どうして私が責められなきゃいけないんですか…?瀬戸に告白されたって、そんなの私が答えを出すことです。樹さんにとやかく言われる筋合いはありません!」