一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
すると、彼も、ぐっ、と眉を寄せる。
「言う筋合いはある。美香の彼氏は俺だろ?他の男なんかに隙を見せんな、って言ってんの…!」
「偽恋人ですよね?どうせ、樹さんだって私のことなんか遊びなんでしょう?」
「…!本気で言ってる?遊びなわけないだろ!いい加減、俺の気持ちに気づけよ!」
(!)
ドッ!と感情の波が押し寄せた。轟々と渦を巻く負のエネルギーが、禁句としていた一言を口から滑らせる。
「私のこと、抱いてないくせに…!」
「!」
彼の動きが止まった。
見開かれる瞳。
私の言葉は、もう止まらない。
「あの夜、ホテルで何もなかったんですよね?分かってたんでしょう?なのに、思わせぶりなことばっかり言って…。私が動揺するのを見て、楽しんでたんですか?」
彼の勢いが一瞬で消えた。心に燃え上がっていた苛立ちの炎も、一気に鎮火したらしい。
なぜ、あんたがそのことを知っているんだ?
そう彼が思っていることは、聞かなくてもわかる。
「私は、ずっと、あの夜に縛られてたのに…」
…と、私が呟いたその時。彼がついに耐えかねたように声を上げた。
「抱いてない、なんて当たり前だろ…!腕の中で爆睡されて、手を出せると思う?」
「っ!開き直るつもりですか…?!」
「あんたが、バーで散々叫んでたから…!」
「え?」
次の瞬間、彼は無意識に口を滑らせる。
「経験ない女の子を、簡単に抱けるわけないって言ってんだよ…!」
「!」