一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

私の声に、薄いロングコートの男が、ぴたり、と足を止める。こちらの顔を見た途端、彼もすべてを思い出したらしい。

その男は、以前私と樹さんが食事に行った時にスクープを嗅ぎつけ、直撃してきた記者だった。

樹さんを侮辱するような質問を飛ばした彼にタンカを切った私。あの夜のことはすっかり忘れていたが、彼の顔を見た途端、記憶が鮮明に浮かび上がる。


「あぁ、桜庭さん…!その節は申し訳ございませんでした。まさか、またお会いするとは。」


「あ、えっと…、こちらこそすみませんでした。…松井さん、でしたっけ。」


「えぇ。覚えていてくださったのですね。ありがとうございます。」


深々と頭を下げた彼につられ、ぺこりとお辞儀をした私。

なんだか複雑な気持ちが込み上げる中、私は記者の彼に尋ねた。


「記事を載せるのは、週刊葵風さんだったんですね。… もしかして、前の記事で樹さんにインタビューをしたのも貴方なんですか?」


「はい。あの夜、失礼な取材をしてしまったので、すぐに正式にアポを取ってインタビューさせていただいたんです。」


まさか、そんなことになっていたとは。

私は、はっ、として思わず口を滑らせる。


「まさか、また、誤解を招くような記事を…?」


「!いえいえ!今回のものはちゃんと久我さん本人にオーケーを頂いてありましたので!」


とんだ失礼な質問をしてしまった。慌てた様子の松井さんも、嘘を言っているようには思えない。

じゃあ、どうして記事を差し替えることに…?

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