一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
ピリリリ!ピリリリ!
甘い空気をかき消したのは、彼のスマホの呼び出し音だった。画面には、電話のマークが表示されている。相手の名前を見た途端、樹さんの瞳が見開かれた。
一瞬眉を寄せた彼だが、すぐにテーブルの上に置いていたスマホを手に取る。
「ーー何の用だ、椿(つばき)。」
砕けた口調。会社の人間でも、仕事の電話でもないらしい。
一瞬、女性の名かと思ったが、彼の応答や粗野な話しぶりからして男性のようだ。
と、次の瞬間。
彼は驚いたように声を上げた。
「今?……まさか、部屋の前に来ているのか?」
(え…?)
尋ねる前に、ばっ!とソファから立ちあがり廊下に駆ける彼。戸惑う私をよそに、ガチャ!と扉を開ける。
すると、ドアの向こうに立っていたのは、すらりとした男性だった。
高そうなベストスーツ。
薔薇が似合いそうな出で立ち。
どこか品があって、それでいて男性の色気も感じさせる来客は、樹さんを見た瞬間、にこり、と微笑んだ。
「やぁ、樹。迎えに来たよ。」