一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
驚きを隠せない。急に現れた彼に、樹さんも動揺しつつ尋ねる。
「椿。お前、なんでここが分かった?」
「ん?桐生さんから、樹は仕事上がったって聞いたからさ。きっと彼女に会いに行ったんだと思って。」
さらり、と樹さんをかわした彼は、すたすたとスイートルームに足を踏み入れた。そして、状況すら飲み込めない私に、すっ、と近づく。
「へぇ、この子が桜庭 美香か。週刊誌より美人だな。」
「そこ、馴れ馴れしく近づかないで。」
私を庇うように二人の間に入った樹さん。すると、その様子を見てふっ、と笑った彼は、私に向かって口を開いた。
「確かに、まずは自己紹介からか。…俺は久我 椿。歳は二十六で君と一緒。よろしくね。」
ぴくり、と肩を震わせる私。
同い年ということにも驚いたが、デジャヴのある苗字に、つい聞き返す。
「久我…?」
「そうそう。別に弟とかじゃない。俺は、樹の従兄弟だから。」
(いとこ…?!)
言われてみれば、顔立ちは少し似ている。美形の血を継いだ彼らは、並んで街を歩けばモデルか何かと勘違いされるほどだろう。
…いや、天下の久我家というだけで囲まれてもおかしくないが。