一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
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コツコツコツ…
革靴の足音が響くホテルのエントランス。すらりとしたベストスーツのポケットから、着信のバイブ音が鳴る。
電話の相手にわずかに目を細めた椿は、静かに息を吐いて画面に指を滑らせた。
「…はい、もしもし。」
スピーカー越しに聞こえる低い男の声。聞き慣れた問いに、椿は笑う。
「あはは、分かってますよ。俺が何のために帰国したと思ってるんです?呼び寄せたのはあんたでしょう。今更サボったりしませんって。」
くるり、とランコントルホテルを見上げた椿は、ぽつり、と男に答えた。
「桜庭美香は、報告書通りの一般人でしたよ。…あの件は、そうですね…、日曜がいいかと。」
その瞳は、先ほどまでの笑みとはまるで違った。うやうやしく返答する彼に、電話の男は命を下す。
静かに聞いていた椿は、小さく頷き、息を吐いた。
「…了解です。では。俺は仕事に戻りますね、社長。」
ツー、ツー…
一定間隔で聞こえる機械音。
軽く息を吐いた椿は、軽く前髪をかきあげて歩き出したのだった。