一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
コンコン。
小さく、扉のノックの音がした。
それを聞くや否や、ピクンと体が跳ねる。そして、主人の帰宅を心待ちにしていた犬のように、ぱっ!と立ちあがり、素早く扉に駆け寄った私は鍵を開けた。
「おかえりなさい!」
樹さんを満面の笑みで出迎えた私。
しかし、その先に立っていたのは待ち望んでいた彼ではない。
シンプルなデザインの白シャツに、タイトなパンツスーツ。
目が合った瞬間、お互い言葉を一瞬失った。
すると、樹さんに似た彼の切れ長の瞳が、微かに細められる。
「ずいぶん可愛いお出迎えだね。いつもこんな感じなの?」
「っ!椿…?!!」
それは、ニューヨーク支店を取り締まる久我一族の一人、椿だった。従兄弟の登場に動揺する私。しかし、それ以上に樹さんだと勘違いしてはしゃいでしまった自分が恥ずかしい。
「ちょっとお邪魔するね。」
「えっ?えっ?どうしたの?」
するり、と私の横を通ってスイートルームへと足を踏み入れる椿。動揺して追いかけると、彼はリラックスしたようにソファへと腰を下ろし、部屋を見回した。
「いいね、この部屋。直通エレベーターで一般客と別の階にあるからバッティングする心配ないし。樹との密会にピッタリ。いつも一緒に寝てんの?」
「そ、そんなわけないでしょう!」