一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
ぞくり…!
背筋が震えた。
思ってもみなかった言葉に、声が出ない。
心を貫くような椿の視線。仮面のように崩れない整った顔だからこそ、圧がある。
別れる?樹さんと…?
もし、私が断ったらどうなるのだろう。ただでさえ、樹さんは私とのスキャンダルのせいで久我家での立場が悪くなってしまった。
ここで私が別れると言わなければ、彼だって離れようとはしないだろう。
「それは…私を脅してるの…?」
「どう受け取ってもらっても構わないよ。俺は本来、他人の色恋沙汰には興味ないから。跡継ぎのイスを狙ってるわけでもないし。」
化けの皮が剥がれた彼は、本心の読めない瞳で私を見つめた。冷めたような口調が怖い。
ゴクリ、と喉が鳴る。
しかし、その時。脳裏に樹さんの声が響いた。
『…好きだよ。』
(…!)
ぎゅうっ…!と、手のひらを握りしめる。
私は、椿から目を逸らさず、静かに答えた。
「…出来ない。」
「え?」
「樹さんを振るなんて、私には出来ない。」
驚いたように目を見開く椿。私の答えが、想定外だったらしい。
いくら脅されても、私は折れるわけにはいかない。
樹さんが、私の見えないところで戦ってくれた。何があっても、好きだと言って私を諦めないでくれた。
そんな彼に、応えないわけにはいかない。
いくら私の存在が彼の足を引っ張ったとしても、久我一族から反感を買っていたとしても。
彼が私を離さないと決めた以上、私は彼に付いていく選択肢しか選べないのだ。