一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
「…へぇ。意外と強いんだね。叩けば脆いと思ってたのに。」
ドサ、とソファに背中を預ける椿。営業スマイルから素の自分を出し始めた彼に、緊張が高まる。
ぐっ、と彼を睨み返すと、椿は微かに口角を上げて続けた。
「わかった。じゃあ、俺と賭けをしよう。」
「賭け…?」
「あぁ。樹が、君を選ぶかどうか。」
どういうことだ?
眉を寄せて彼を見ると、椿は信じられない一言を放つ。
「樹は今、須賀財閥の社長令嬢とお見合いを受けさせられてる。」
「お、お見合い?!!」
つい、大声が出た。椿は、さらりと受け流す。
「もちろん、樹は知らされていない。社長が勝手に仕組んだことだからね。」
須賀財閥といえば、久我ホールディングスに並ぶほどの大手グループだ。CMなどで社名を見ない日はない。
急に本社に呼び出された、というのはこのことだったんだ。日曜日に私が樹さんと会うことを知っていた椿が一枚噛んでいたことに今さら気付く。
すると、椿は黒い笑みを浮かべて、私を試すように告げた。
「もし、樹がそのお見合いを蹴って美香との約束を取ったら俺の負け。俺は潔く、社長の犬をバックれてニューヨークに戻る。」
ーーただし。
そう続けた椿は、静かに言い放った。
「もし、日付が変わる前に樹がここに来なかったら…、君には樹と別れてもらう。」