一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
どきん…!
心臓が、握りつぶされた気がした。
お見合いを蹴る?
相手は、企業提携を結んだら敵無しになるほどの、大財閥の社長令嬢だ。樹さんと並んでも、私よりはるかに釣り合いの取れる女性でもある。
もし、そんないい話を断ったりしたら、久我家の立場さえ悪くなるのではなかろうか。
いくら親が勝手に仕組んだお見合いとはいえ、簡単にすっぽかすなんて出来るはずがない。
「自信ないの?まさか、ここにきて樹のことを心配してる?」
「…!」
分かりやすく顔に出てしまっていたようだ。心中を察したような椿は、小さく笑って目を細める。
「樹のことを振る気がないんなら、悩む必要なんてないんじゃない?…もしあいつがここに来なかったら、俺に乗り換えてもいいよ。」
「は…っ?!」
「顔も似てるし。御曹司の嫁程じゃなくても、玉の輿には乗れると思うけど。」
「バカにしないで…!!」
まさか、お金目当てで付き合っているとでも思われているのだろうか。
椿にしてみれば、私みたいな一般人が久我家を揺るがす存在になっていることが気にくわないのかもしれない。
だが、こんな言われっぱなしになっているのは癪だった。
「…分かった。その賭け、受けて立つ。」
「…!」
「その代わり。私が勝ったら、ちゃんとさっき言ったことを守って。」
スイートルームに、私の高らかな声が響く。
もう、後戻りはできなかった。
「いーよ。そん時は君の味方になってあげる。」
椿は、思惑通り、と言った様子で、ふっ、と口角を上げたのだった。