一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
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「お茶でも飲んだら?この際だし親睦でも深めようよ。」
「…遠慮します。」
時刻は午後十一時四十五分。
大きなガラス窓から夜に包まれたビル街を見ながら、私はひたすら焦りを押し殺していた。
椿が提示したタイムリミットまであと十五分。日付が変わってしまったら、その時点でアウトだ。
「緊張してる?」
「…別に。」
「ふぅん。その割には落ち着かないみたいだけど。」
ガラス越しに、見透かすような視線が私をとらえた。
自分でも分かっている。
ここに、樹さんが来る確率が限りなく低いってことを。
お見合いを蹴るということは、彼にとっても久我ホールディングスにとっても、デメリットが大きい。須賀財閥の社長令嬢はちゃんと英才教育を受けた麗しい女性なのだろうが、私のような一般人は街を歩けばそこら中にいる。
常識的にも、体裁的にも、樹さんはお見合いが終わるまで席を立たないべきなのだ。