一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
どくん!
今まで避けていたことを投げかけられ、言葉が詰まった。
一度別れたらきっと、私と樹さんの人生は二度と交わることはない。二人で過ごした時は、過去の思い出として心にしまっておくには贅沢すぎる時間だった。
彼は、私にはもったいないほどの愛をくれた。住む世界がまるで違った私を好きだと言って、抱きしめてくれた。
そんなシンデレラストーリーがあるはずない、と、出会ったばかりの頃はスイートルームで目覚める度に頬をつねっていた。
…偽恋人から始まった二人の関係。
いつからだろう。こんなに樹さんに惹かれたのは。
『結果が出るまで、ってどれくらいなんですか…?』
『…それは断言できない。だけど、きっと短くはない。年単位になるか…ずっと帰ってこれない可能性だってある。』
私が、ずっと彼を想い続けていたとして、彼が心変わりしない可能性がどこにある?
私たちには、確証も誓いの言葉もないのだ。
このまま、ずっと会えなかったら
自然消滅ってことも……
ブブブ…!!
その時、ポケットの中からスマホのバイブが聞こえた。着信である。
表示された番号に見覚えはないが、私は眉を寄せてその電話をとった。
「も、もしもし…」
すると、電話越しに聞こえたのは、ユーモアの気配もない冷静な声。
『突然のお電話すみません、桐生です。』
「っ、桐生さん?!」