一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

どくん!


今まで避けていたことを投げかけられ、言葉が詰まった。

一度別れたらきっと、私と樹さんの人生は二度と交わることはない。二人で過ごした時は、過去の思い出として心にしまっておくには贅沢すぎる時間だった。

彼は、私にはもったいないほどの愛をくれた。住む世界がまるで違った私を好きだと言って、抱きしめてくれた。

そんなシンデレラストーリーがあるはずない、と、出会ったばかりの頃はスイートルームで目覚める度に頬をつねっていた。


…偽恋人から始まった二人の関係。

いつからだろう。こんなに樹さんに惹かれたのは。


『結果が出るまで、ってどれくらいなんですか…?』


『…それは断言できない。だけど、きっと短くはない。年単位になるか…ずっと帰ってこれない可能性だってある。』


私が、ずっと彼を想い続けていたとして、彼が心変わりしない可能性がどこにある?

私たちには、確証も誓いの言葉もないのだ。

このまま、ずっと会えなかったら

自然消滅ってことも……


ブブブ…!!


その時、ポケットの中からスマホのバイブが聞こえた。着信である。

表示された番号に見覚えはないが、私は眉を寄せてその電話をとった。


「も、もしもし…」


すると、電話越しに聞こえたのは、ユーモアの気配もない冷静な声。


『突然のお電話すみません、桐生です。』


「っ、桐生さん?!」


< 162 / 186 >

この作品をシェア

pagetop