一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

唯に続くように、如月さんもにこりと笑って口を開く。


「美香ちゃん。樹によろしくね。」


心強い味方たちが、駆け出す私を見送った。

素早く仕事着を脱ぎ、シャツの上にカーディガンを羽織った。コツコツと廊下を走りながら、社員証をかざして裏口から飛び出す。

ランコントルホテルから空港までは、車で一時間半。…ギリギリ、出発前の彼に会えるかもしれない。

私は、期待を胸にひたすらコンクリートの道を走った。

しかし、急いでロータリーまで出た時、運の悪いことに駅に向かうバスも、タクシーもいないことに気がつく。


(今からタクシーを呼んだら、間に合わない…?どうしよう。大通りまで走って拾うしか…)


…と、焦って駆け出そうとした

その時だった。


ブォン!!


大きなエンジン音。

はっ!として振り返ると、そこに見えたのは黒いバイク。

颯爽とロータリーを横切り、目の前で止まったバイクに目を見開くと、ヘルメットの隙間から切れ長の瞳が見えた。


「っ、椿…?!!」


思わず声を上げると、彼はぶん!と私に向かってヘルメットを投げる。


「乗れ、美香!」


< 165 / 186 >

この作品をシェア

pagetop