一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
反射的にキャッチした私だが、思わぬ救世主に体が動かない。
「な、なんで椿がここに?!!」
「樹の転勤が決まったって聞いたから、美香の泣き顔を見に来た。」
「っ、ひどい…!」
「冗談だよ。…桐生さんから朝に連絡をもらってな。君を連れてくるよう頼まれたんだ。」
あの敏腕秘書、全てを見越して事前に椿を呼んでくれていたのか。
さすが、としか言いようがない。
「もしかして、空港まで送ってくれるの…?」
「あぁ。さっさと乗りな。」
すぐに駆け寄ってヘルメットをつけようとした私。しかし、はっ、として椿を見つめる。
「…いいの?私に手を貸すようなことをして…」
「は?」
「だって、椿は私と樹さんを別れさせるために日本に来たんでしょ…?」
すると、彼は微かにまつ毛を伏せて呟いた。
「言っただろ。賭けに負けたら味方になるって。」
(…!)
この人、意外と律儀なんだな。
飄々としていて本心が読めない上にすぐに人を口説こうとする軽い男だが、思っていたよりも誠実な人らしい。
「今、失礼なこと考えてるだろ。」
「ううん。椿っていい人だなって思ってた。」
「…早く乗れ。」
ブォン…!
ヘルメットをつけた私は、椿の後ろに乗って彼にしがみついた。
慣れていない私を横目で見つめた椿は、くすりと笑う。
「振り落とされたら置いてくから。」
「えっ!!」
「…嘘だよ。ちゃんと掴まってな。」
ハンドルを握る椿がグン、と地面を蹴り、黒いバイクが颯爽と走り出したのだった。