一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
樹は、その問いに目を見開いた。
瀬戸は、そんな大人な選択は自分にはできないと悟っていた。だからこそ、美香のためを思う、などといったニュアンスでそう告げた樹に、あえてこの質問を飛ばしたのだ。
しかし、クールな仮面を剥ぎとる大打撃を繰り出したと思っていた瀬戸は、即座に返された樹の言葉につい思考が止まる。
「いや。もし、俺が帰ってきたときにまだ美香が一人でいてくれたら、俺は全力で口説き落とす。…もし、他に男がいたとしたら……何が何でも奪い返す。」
思わず、顔をしかめた瀬戸。
結局、樹は何も変わっていなかった。彼女を諦めたわけでも、熱が冷めたわけでもない。
なんだか拍子抜けしたような脱力感を覚えた瀬戸だが、「でも…」と続けた樹の声に、はっ、とする。
「もし、本気で美香が俺のことを好きじゃなくなったら…。…瀬戸なら許す。」
「え…?」
「だから、何年経っても俺が美香の元に帰れなくなったとしたら、その時は……」
と、次の瞬間。
樹の言葉を、瀬戸が制した。
真剣な瞳で樹を見つめる瀬戸。彼は、静かに口を開く。
「それ以上は言わないでください。…久我さんが桜庭のことを俺に託すなら、悪い虫がつかないように俺はあいつを見守ります。」
「…!」
「本当は、それを言いたかったんですよね?わざわざ、桜庭と同期の俺を呼びつけた、ってことは。」