一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
目を見開く樹。
ふっ、と笑った瀬戸は「初めから素直に言えばいいのに。」と呟き、樹をまっすぐ見つめた。
「それなら頼まれてあげますよ。……振られた俺にそんなことを頼むあんたを、上司じゃなかったら殴りたいところなんですが。」
「…殴っていいよ。」
本気でそう返した樹。だが、それを分かっていた瀬戸は、微かな笑みを浮かべたまま、視線を逸らさずに彼へ答えた。
「今はやめときます。あんたが桜庭を泣かせた時までとっておく。」
「…そうだな。」
二人は、それから何も言わなかった。
トン、と瀬戸の肩へ手を置いてすれ違った樹。
瀬戸は、そんな彼の背中を見つめながら、小さく息を吐いたのだった。
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ブォン…!
空港への到着と同時にヘルメットを外すと、次々に空へと飛び立つ飛行機の音が鮮明に聞こえた。
ゴォォォ、と鳴り響くエンジン音。
焦りが募る中腕時計を見ると、樹さんのフライトまで三十分を切っていた。きっと、彼はもう搭乗手続きを終えているだろう。
搭乗ゲートへと行ってしまったらもう手遅れだ。
バイクから私をおろした椿は、目を細めて呟く。
「樹がいるのは、第1ターミナルだろ?広すぎてすれ違っても気づかない気がするけどな。」