一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
確かに、空港は世界へ飛び立つ人たちで溢れている。こんな人混みの中から人を探しだすのは容易くない。
…と、私が眉を下げた
その時だった。
ウィーン…!
目の前の自動ドアが開き、見慣れたスーツの青年が出てくる。
予想外の出会いに思わず目を見開き、彼の名がポロリと口から出た。
「瀬戸?!!」
「!桜庭…!来てたのか。」
まさか、こんなところで会うなんて。
大勢の人がいる中で偶然知り合いと対面するなんて、奇跡すぎる。
すると、瀬戸は静かに私へと歩み寄って口を開いた。
「久我さんなら、出発ロビーにいったぞ。」
「えっ!!」
「お前、久我さんに会いに来たんだろ?」
見事に言い当てられ、ぱちり、とまばたきをする。
瀬戸は動揺する私に、ふっ、と笑った。
「十五分前にはゲートをくぐるだろうから、走らないと間に合わないぞ。…久我さんは“紺のシャツ”だ。スーツや白シャツが多いだろうから、目印にすれば運良く見つかるかもしれない。」
「!」
“紺のシャツ”
手がかりにしては弱いかもしれないが、私は何度もそのワードを心の中で唱えた。
(何としてでも、見つけ出してみせる…!)
「椿、ありがとう!本当に助かった…!」
「あぁ。君を泣かせると樹に怒られるからね。」
ヘルメットを手渡してお辞儀をすると、椿は冗談交じりにそう言って手を振った。
従兄弟と同期に見送られ、私は搭乗ゲートがある三階まで駆け出す。