一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
プルルル、プルルル…!
走りながら樹さんに電話を試みるが、どうやら彼はすでにスマホを機内モードにしているらしい。
あぁ、運が悪すぎる。ここですれ違ったら終わりだ。
だが、伝えたいことも心の中で決まっている。
ここまで来たのに、私が諦めるわけにはいかないのだ。
カッカッカッ!
ヒールでフロアを駆け回る。ロサンゼルス行きの飛行機のゲート案内を見つけ、やっとのところで迷子から開放された
次の瞬間だった。
「!!」
ゲート付近に、紺のシャツを着た人影が見えた。
どくん…!!と、胸がなる。
「樹さん!!」
つい、人目もはばからず、彼の名を呼んだ。
ぎょっ!としてこちらを見た人もいるが、そんなことを気にしていられない。
「樹さん!待って、止まってください!!」
一向に立ち止まる気配がない彼。
フライトの搭乗受付が迫っているからか?それとも、こんなギリギリまで連絡一つ寄越さなかった私に怒っているのか?
それ以外の理由だったとしても、ここまで来て帰るわけにはいかない。
「待って、樹さん!!樹さんっ!!!」
大声で叫びながら走ると、はぁ、はぁ、と息が上がる。
「っ?!」
すると、その時。
つい、ヒールのつま先が、ツン、と引っかかった。
(嘘っ…!)
焦りのせいでもつれたのだろうか。何もないところで転びそうになる。見えなくなっていく紺のシャツの男。
「きゃっ…!」
完全に身体が前のめりになり、ぐらり、と視界が揺らめいた
…と、次の瞬間だった。