一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
「こら…!…誰追いかけてんの…!」
「っ?!」
ぐいっ!と私の腰を支えた力強い腕。低く艶のあるその声は、私が待ち望んでいた彼のものだった。
「い、つきさん……?!」
ドッペルゲンガーかと思ったが、そんなことはあり得ない。
ぼすん!と引かれるがまま後ろに倒れ込むと、シャツ越しに硬い胸板の感触がする。
「な、何でここに?!!」
「何で、って…。大声で俺の名前を叫びながら赤の他人を追いかけてる美香が見えたから…全力で追いかけてきたん…だよ……」
はぁ、はぁ、と乱れている彼の呼吸。相当走らせてしまったらしい。
しかも、まさか樹さんと全く別人を追いかけていたなんて
「…は、はずかしー……」
「…俺以外の男を追いかけないで…ばか…」
お互い上がった息を落ち着かせながら、すっ、と離れる。
改めて彼を見上げると、いつもと変わらない樹さんがそこにいた。
“会えるのは、これで最後”
ぶわっ!と感情が込み上げる。
彼と会えば、泣きそうになるのは分かっていた。
でも、私には伝えなければいけないことがあるんだ。
「樹さん…、…ずっと連絡しなくてすみませんでした…!覚悟がなくて…怖くて電話できなかったんです。」
「…!」
「でも、私…、直接伝えようと思って…!」
はっ、とする彼。
迷いを振り切った私は、目の前の彼に高らかに宣言した。
「待ってる…!」
「!」
「私は、樹さんを引き止めない。待ってるから。…何年かかっても、ずっと会えなくても、私は…、っ!」