一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
わしゃわしゃと髪の毛をかきあげるが、どうやっても思い出せない。
しかし、状況が状況だ。
現在、どこかもわからないホテルのベッドの上で、見知らぬ男の人と二人で寝ている。
しかも、相手は裸で、こっちも下着姿。
もう、これは他の何ものでもない。
「…やっ、ちゃった…?」
サッ!と、血の気が引いた。
まさか、恋愛もろくにしたことのない私が、彼氏に振られたその夜に、すべての過程をすっ飛ばしたワンナイトラブをかましてしまうとは。
というよりも、何も記憶がないなんてどういうことだ?二日酔いで頭は痛むが、体の痛みはない。
仮にも、“初めて”だよ?
いくら酔っ払っていたとはいえ、こんなことってある?
…まさか、この男の人が相当上手かったとか………
「…ん…」
もぞりと隣の彼が動いた。
どきん!と震えて身構える。
寝ぼけているように寝返りを打った彼。すると、彼の漆黒の髪の毛が頰を滑り、その寝顔が目に入った。
長い睫毛に、すっと通った鼻筋。
きめ細やかな肌は、なんのお手入れをしているんですか?と聞きたくなるほど綺麗だ。
想像してもいなかったほど整った顔立ちに、つい見惚れて言葉を失う。
「ど、どちら様……?」
ぽつりと出た声に、まだ夢の中にいる様子の彼から返事はなかった。