一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
すると、ハンカチで手を拭いた唯が、さらり、と言った。
「そういえば久我さん、出張から帰ってきたらしいね。」
「っ!」
その名を聞き、つい、ぴくり、と肩を震わせると、私の心中を察したような唯がにやり、と笑った。
「仕事終わった後に会うから、そんなに丁寧に仕上げてるわけ?」
「ち、違うって。何で私がわざわざ樹さんのために…」
「さらっと名前で呼んじゃうあたり、もう好きになってるんでしょ?素直に認めたら?」
ぐっ…!
痛いところを突かれ、何も言い返せない。
確かに、最近は毎夜、彼がスイートルームを訪ねてくるのを待っている自分がいた。無意識にそわそわして、何となく髪の毛を整えてみたりして。
でも、彼は私を本気で好きなわけじゃない。
よって、私が彼を好きになっても、成功する確率はゼロパーセント。
(これからは簡単にキスを許したりするもんか…!)
悶々とした悩みと彼の顔を頭の奥に押し込み、頭を仕事モードに切り替えようと廊下に出て深呼吸をした
その時だった。