一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

ザワザワ…


何だか、いつもより事務所が騒がしい。唯と顔を見合わせて静かに足を踏み入れると、宴会部門のチーフである森久保さんの怒号が響いた。


「メインの肉が届かないだと?!発注日のミスなんて、取り返しがつかないぞ!」


森久保さんの前で青ざめた顔で頭を下げているのは、去年営業部に所属になった速水くんだ。

どうやら、彼が任されていた案件でミスが発生したらしい。

ホテルの調理長である馬場さんも、険しい表情で書類を見つめている。


「明日、当ホテルで開かれる加護株式会社の謝恩会で出すはずのメインは、加護社長のご意向で決めた近江牛を使用したメニューですが…肉はいつ届くんです?」


「三週間後、です…」


重々しい空気が立ち込めた。

加護株式会社は、久我ホールディングスと事業提携を結んでいる大企業だ。株主が集まる謝恩会でわざわざランコントルホテルを選んだのも、その関係性があってこそ。

前々から、先方と何度か調整が行われ、会場のレイアウトや見積もりなどを話し合ってきた。

それが、前日になってこんなことになるなんて。


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