一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
私は、「なに?実は知り合いだったの?」と尋ねる唯に、ぶんぶんと首を横に振る。
知り合いという関係ではない。彼とはあのバーで会ったのが初対面のはずだ。
しかし、なぜか寝ている彼の横顔に見覚えがある気がした。…起こさないようにホテルを出ることに必死で、顔をまじまじ見る余裕はなかったが。
すると、唯は清掃用具を積んだカートをガコンと押してさらりと言った。
「まぁ、相手との連絡手段がない以上、もう会うこともないでしょう。切り替えて仕事仕事!今日はとっておきのイベントがあるんだからね。」
その声に、事務室に貼られた一枚のポスターを見つめた。
“『桜の窓』新作映画試写会
4月29日【東京会場】スターホール”
スターホールとは、ランコントルホテルと併設されたイベント向けホールのことで、ライブ会場や、コンサートホール、今回のような映画試写会など、さまざまな場面で使われる多目的ホールだ。
一般応募60組と、多くの報道陣が詰めかけるであろう今日の新作試写会には、映画のキャストも登壇するようで、当ホテルでのイベントが決まった時から着々と準備が進められていた。