一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
「すぐに対応しないといけない案件なんですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど…」
「なら、せっかくお休みをもらったんですから、体調悪い時くらいゆっくりしてください…!」
この人は、放っておくとすぐに自分を追い込む仕事人間。
桐生さんのブラック加減に匹敵するほどワーカホリックだ。
じっ、と彼を見つめていると「わかったわかった。」と苦笑する樹さん。パソコンの電源を落とすところまでしっかり見守る。
ときより「…けほけほ」と咳き込む彼は、やはり体がだるそうだ。平静を装ってはいるが、相当体調が悪いらしい。
私は、腕まくりをしてシンクの蛇口をひねった。
「ご飯、食べてないんですよね?すぐに作りますから、待っててください。」
「え…」
すると、彼は目を見開いて私を見つめた。
「美香が作ってくれるの?俺のために?」
「?はい。これでも一応、料理は出来るんですよ。」
とことこ、と近くに歩み寄る彼。きょとん、として見上げると、まつげを伏せた彼は、心なしか嬉しそうな声でぽつり、と呟く。
「…隣で見てたい…」
「っ!だめですよ。寝ててください。」
隣でじっと見つめられちゃあ、変に緊張して落ち着かない。彼の背中をぐいぐい押して追い返すと、彼はしぶしぶリビングを出て行った。
パタン、と扉が閉まり、私はふぅ、と息を吐く。
本当、油断ならない。
私は、そわそわする胸を落ち着かせながら、トン、とコンロの上に小鍋を置いたのだった。